手紙がめちゃくちゃ好きだからどうしてもほしいという話
恋は盲目なので好きな人の手書き文字なんかすーぐ好きになってしまう。
そりゃもう文字の形の好き嫌いなど最初からなかったみたいに100%好きになる。
手書き文字が好きだ。
ペンを使って肉体がおしゃべりしている。
感情を最も雄弁に語るのは、めちゃくちゃめちゃくちゃめちゃくちゃ悔しいけど今のところ理性(例えば言葉)ではなく、肉体じゃないかと思う。
涙でひたひたの瞳も、優しさではちはちの声も、あまりにずるいじゃないですか。
好きな人にそんなことされたらもう、お手上げです。そりゃないよ!ハンズアップ!失禁も辞さない。失禁しないけど。
心のゆらめきを伝える震え、いま吐き出そうとしたため息、肉体の語りは一瞬で消えてしまってあまりに惜しい。
だから、ここにちょっと書き留めてほしい。
姿を記録するためにシャッターをおろすのとおんなじように、
心を記録するために書いてほしい。
それはなまなましい感情のアルバムだ。
理性で紡がれる内容としての言葉が、肉体によって可視化され、紙の上に残されて、10年、20年、30年。
好きな人の名前は、他の文字よりなんとなく可愛く書けるのは果たして気のせいなのか、そうでないのか。
授業中、手持ち無沙汰に、ノートの端に好きな人の名前を書いてきた女としては、気のせいじゃないと思っている。