言葉にする
言葉にされないと不安だ。
言葉を信じるより行動を信じるほうが賢いことはわかっているのだけれど、私は例えば名前で呼ばれたいし好きだよと囁かれたいしかわいいと漏らされたい。
言葉は生き抜くための道具であり、しかしときに健康で動物的な生活を阻害する毒にもなる。
私は言葉で考えることが好きだ。
言葉にして、言葉で考えることのつよさを信じていたい。
言葉で理解し納得できればひどく安心する。職業病と言われたらそうかもしれないし、もともとそういう病気だったからこの仕事をしているのかもしれない。
だからあなたのことが好きな気持ちを、詳らかに言葉で表現できないのはもどかしい。
ときおり漏らす吐息の色や、笑顔を作るときのやわらかさや、繋いだ手をにぎるときの無意識とも意識的ともいえないリズムから、全部がわかってしまってくやしい。
私はいかほどを相手に伝えられ、いかほどを相手に理解してもらっているのか、それを考えると胸の中が焦げ付きそうになる。
あなたは短い言葉ですべてを伝えるのがとてもじょうずだ。
わたしもそのくらい賢くあればいいのにな。