イカスミパスタとラムチョップ
イカスミパスタとラムチョップをデートのディナーで頼みたい。ごく自然に。
私の幸福は、チキンの丸焼きを骨までしゃぶれることだ。
心斎橋に家族みんなで大好きだったイタリアンがあって、その店のチキンは絶品だった。
慣れた手つきでナイフをふるって切り分ける父、綺麗なルージュで軟骨部分をくわえ込む母、付け合せのポテトとチキンをただただ夢中で貪る弟とわたし、ひとり2枚で足りないおしぼり。
誰かと一緒に、手で肉を食べる。
これぞ食欲というはしたなさの一切を許されながら、貪ることに悦を感じる。
どうぶつなんだという実感が、脳みそにビシビシぶっ刺さって、本能が満たされる。
大好きなひとほど、
愛しているひとほど、
一緒に生きていきたいひとほど、
はしたなく食べるところを見られたい。
はしたなく食べているところを見せてほしい。
一緒になって、生きるために食べたい。
だから私はいつだって、
デートに連れて行ってもらえるのなら、
ニンニクたっぷりのイカスミパスタも
骨の際ほど美味しいラムチョップも
ドレスコードのある夜景の綺麗なレストランで、ぜひとも口元を汚して食べたい。